2021年S耐第5戦は、9月18〜19日に鈴鹿サーキット(三重県)において5時間レースとして開催。大八木信行、青木孝行、藤波清斗、大八木龍一郎の#81 DAISHIN GT3 GT-Rは、予選5番手からのスタートからトップ争いを演じていたが、中盤にバックマーカーとの接触で右リヤのサスペンションを壊しピットイン。1時間50分掛け修復してコースに戻りチェッカーを受けたが、周回数不足のために完走扱いとはならなかった。
今回の5時間レースには、9クラスに計46台がエントリー。ST-Xクラスは5車種5台で争われる。DAISHIN GT3 GT-Rは今回も30kgのウェイトハンデを搭載。鈴鹿はドライバー全員がよく走り込んだチームの地元コースながら、昨シーズンは開催がコロナ禍で中止となったこともあり、是が非でも優勝を狙うつもりで現地入りした。
◆公式予選
九州から四国、紀伊半島を横断する台風14号の影響で、18日午前中に予定されていた走行枠はすべてキャンセルに。公式予選も約2時間遅れの14時55分に開始された。決勝レースのグリッドはA、Bドライバーのベストタイム合算で決められる。大八木と青木の合算タイムは5位で、これで5番グリッドからのスタートが確定した。また藤波、龍一郎も難なく基準タイムをクリアした。
◆決勝レース
19日は台風一過の秋晴れとなった。しかし気温は上昇し午前中に30℃まで達した。5,000人近いファンが固唾を飲む11時34分、シグナルがグリーンになり5時間耐久レースがスタート。青木がステアリングを握りトップを追いかけ、オープニングラップでポルシェ、5周目にマクラーレンをかわし6周目には2位へ順位を上げた。トップを走るアストンマーティンとは12秒ほどの差があり、路面温度が高いためタイヤの摩耗を考えるとなかなかその差を詰められない。
35周でマクラーレンと青木がピットイン。ここで藤波がコースへ。藤波のペースは良く49周目にはトップとの差を2.9秒まで縮めた。そしてその差は56周目には2.0秒、57周目には1.1秒となり58周目にはついに逆転トップに立った。さらにアストンマーティンには接触行為によりドライブスルーペナルティが課され、2台の差は34秒まで広がった。
71周で藤浪はピットインして再び青木に交代。2位との差を50秒近くまで広げた青木は、80周目のバックストレートで2台のバックマーカーを抜きにかかった。しかし2台の間をすり抜けようとした際に右側を走行していた車両と接触。サスペンションを壊して白煙を上げながら緊急ピットインとなった。
藤波はペースを落とすことなく安定した速さでラップを重ね、61周目に13.8秒あった#777マクラーレンとの差を、82周目には34.7秒まで広げた。レース終盤の90周で藤波はピットインしてスプラッシュの燃料補給のみでトップを守ってコースへ。レースは16時3分を過ぎて112周でチェッカー。これで富士24時間に続き連勝を遂げたかと思われた。すぐさま車両はピットガレージに入れたが、ロワアームをはじめ予想以上にダメージは大きかった。また交換するパーツはそろっていたものの、それらを組み上げる作業に時間を要すこととなり、メカニックが懸命に作業を続けた。
チェッカーまで残り15分を切って1時間50分に及ぶ作業が終了。青木が乗り込んで1周のチェック走行に出た。観客席からは拍手が起きた。これぞ耐久レース。そしてピットに戻りアンカーの大八木へ交代。大八木が5周した16時34分でチェッカー。クラスの義務周回数に9周及ばず完走扱いとならず、ポイント獲得はならなかったものの、トップ争いを展開し諦めない姿勢を見せることのできたレースとなった。
◆大八木 信行
「完走となるかどうかは分からなかったけれど、最後はレースを決して諦めないという姿勢を示すためにも、時間はギリギリであったけれど出て行きました。速さはあるし3戦連続でトップ争いをして間違いなく勝てるというクルマであることは証明できました。今年はいろいろあったし、そんな姿を最終戦岡山ではみんなに見せたいと思います」
◆青木 孝行
「抜きに行ったところで当てているので自分の責任です。相手に大きなダメージがなくて良かったですが、チームには迷惑をかけてしまいました。メカニックが一生懸命に作業をして時間内に直してくれたことには感謝しています。周回数不足で完走にならなかったのは残念ですが、最終戦では勝って今年を締めたいと思います」
◆藤波 清斗
「最終コーナーからストレートに入って(アストンマーティンが)見えたのでスイッチが入りました。追いつくところまで行ったものの、これは無理かなとも思いましたが、何とか抜いてトップに立つことができ、パフォーマンスは見せられたのかなと思います。今回起きてしまったことは仕方がないので、岡山でまた頑張ります」
◆尾本直史チーム監督
「交換するパーツはニスモさんが準備していましたが、アッセンブリーになってなかったので組むのに時間がかかってしまいました。メカニックたちが頑張ってチェッカーを受けられたことは良かったと思います。ここで悪い流れを断ち切って、最終戦はしっかりと自分たちのレースをやりきるだけです」