🚗 プロローグ:R32──“GT-R復活”は、時代への挑戦だった
1989年。昭和が終わり、平成が始まった。 世の中は景気に沸き、ハイテクや贅沢が市民権を得る中で、ニッサンは静かに“ある名車”を復活させようとしていた。
スカイラインGT-R——その名は、1973年に姿を消して以来、長らく語られることのなかった“伝説”だった。 だが、その血統はたしかに残されていた。
この記事では、30〜50代のクルマ好きに刺さるエモーショナルなトーンで、 スカイラインGT-R R32がいかにして誕生し、なぜ「怪物」と呼ばれるまでになったのかを、 開発秘話・トリビア・逸話を交えて描いていく。
🔧 計画コード「P Project」──封印されていた“GT-R”の再起動
日産社内でGT-R復活を模索する動きは、1984年ごろから極秘に始まっていた。 このプロジェクトは「P Project」と呼ばれ、社内でもごく一部の限られた技術者しか知らされていなかった。
🧠 トリビア①:そもそも「GT-R」という名前は使えない予定だった!?
復活構想当初は、“GT-R”という名は時代にそぐわないとされ、別のスポーツモデルとして開発が進められていた。 だが、開発チームが「GT-Rの哲学」を守ることに強い信念を持ち、最終的に伝統ある名前を受け継ぐことが決定。
「GT-Rを名乗る以上、“普通の速さ”では意味がない」
🛠️ 心臓部「RB26DETT」──ターボと直6の理想形
R32 GT-Rの核にあるのは、伝説のエンジン「RB26DETT」
- 2.6L 直列6気筒ツインターボ
- 公式出力280ps(実測ではそれ以上)
- 高回転・高耐久を誇る名機
このエンジンは、単なるパワーだけでなく、チューニング耐性やバランスの良さでも多くのチューナーたちに愛された。
🧠 トリビア②:“280馬力の自主規制”の裏には日産の戦略があった
当時の日本車には“280ps自主規制”があったが、RB26DETTはそれを遥かに超えるポテンシャルを秘めていた。 つまり、「規制の枠内で、どこまで“本気”を隠せるか」が開発陣の腕の見せ所だったのだ。
🧩 ATTESA E-TSとSUPER HICAS──GT-Rの異名「電子の申し子」
R32 GT-Rのもうひとつの革新が、駆動と操舵の制御システム。
- ATTESA E-TS:前後駆動配分を最適化する電子制御トルクスプリット4WD
- SUPER HICAS:後輪操舵による旋回性能向上
この組み合わせにより、GT-Rは“重くて曲がらない4WD”という常識を覆し、 「電子制御で走りを極める」という新次元へ踏み込んだ。
🧠 トリビア③:HICASはレースカーから逆輸入された技術だった!?
実はHICASの起源は日産がル・マンで得たデータ。 その発想を市販車に落とし込んだのがR32だった。
「未来から来たクルマ」と呼ばれたのも頷ける。
🏁 伝説の幕開け:グループAで“29連勝”という暴挙
R32 GT-Rを語るうえで外せないのが、国内ツーリングカー選手権(全日本ツーリングカー選手権/JTC)での無敵伝説。
1989年にデビューし、1993年まで“29戦無敗”という記録を樹立。 そのあまりの強さから、海外では“Godzilla”の異名で呼ばれるようになる。
✔ ニュージーランド、オーストラリア、欧州でも活躍 ✔ 「市販車ベースで最強」という存在証明
🧠 トリビア④:“ゴジラ”という呼び名は英TopGear誌が命名!?
イギリスの自動車メディア「TopGear」が、あまりの暴れっぷりに“Godzilla from Japan”と表現。 これが世界中のGTRファンの愛称として定着した。
💡 カタログにない開発裏話:ハンドリング開発の現場
開発チームは、実に1mm単位での調整を繰り返していた。 とくにステアフィール、ロール剛性、アクセルレスポンスなど、ドライバーとの“対話感”を徹底的に磨いた。
✔ テストドライバーが「目を閉じて曲がれる」とまで語ったハンドリング ✔ 風洞実験での空力最適化も、まるでレーシングマシンのように行われた
🧠 トリビア⑤:ボディ設計者は“サス設計者とケンカした”!?
ある開発者インタビューでは、「リアサスを広げたいサスペンションチーム」と「フェンダーを広げたくないボディ設計チーム」で何度も衝突があったという。
「最終的に“いいケンカ”をしたからこそ、あのバランスになった」
🌍 世界が振り向いた瞬間:海外市場でのインパクト
当初R32 GT-Rは日本専売モデルだったが、オーストラリアやイギリスなど、限られた市場で輸出されるようになる。
✔ 輸出仕様のR32は“ヘッドライトやバンパー形状”が微妙に異なる ✔ 現在も右ハンドル仕様をベースに“逆輸入”として人気
🧠 トリビア⑥:R32はアメリカでは“合法化に20年かかった”
アメリカでは25年ルールにより、正式に輸入できるまで長く待たされた。 しかし2014年以降、合法化とともに人気が爆発。今やアメリカでもR32は“伝説のマシン”とされている。
🧠 番外編:R32の“都市伝説”あれこれ
- 初期型の方が吸気音が大きいという噂
- 最初期のプロトタイプでは“NA仕様”もあった
- RB26DETTは“400馬力超までノーマルで耐える”と言われる
- 通称“BNR32”の「BN」は、「Bプラットフォーム+Nissan Racing」の略
「R32には、語り継がれるべき“神話”が詰まっている」
🏁 エピローグ:それは、単なる速さじゃない
スカイラインGT-R R32。
それは、失われていた“GT-Rの魂”を再び灯し、 時代の先を走り抜けた“怪物”だった。
✔ クルマというより、意志を持った塊 ✔ 開発者たちの執念が形になった遺産 ✔ 今なお多くの人を魅了し続ける、名車中の名車
「R32がいなければ、今のGT-Rは存在しなかった」
そして今日もまた、どこかの峠で、“あの音”がこだまする。 それは、機械と人間が共に夢を見た証。
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